2012 年 73 巻 8 号 p. 1924-1928
食道悪性腫瘍の中でも極めて稀な食道悪性末梢神経鞘腫を経験したので報告する.症例は64歳女性.胸部レントゲンで上行大動脈の拡大を指摘され精査加療を行った.CTにて後縦隔に80×75×40mm大の腫瘍を認め,EUS-FNAにて神経原性腫瘍が疑われた.手術は胸腔鏡下食道切除を行い,再建は後縦隔経路にて胃管による再建を行った.腫瘍細胞は紡錘形で索状に増生し,免疫組織化学染色でS-100蛋白陽性であったことから神経原性腫瘍であるschwannomaとMPNSTが鑑別診断として考えられたがKi-67標識率が8%を超える領域があったことから低悪性度のMPNSTと診断した.いずれのリンパ節には転移を認めなかった.術後2年間再発無く経過観察中であるが食道悪性末梢神経鞘腫の予後は不明であり,再発の可能性も考えられるため十分な経過観察が必要であると考えられる.