日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡による検索が診断に有用であった遅発性外傷性脾破裂の1例
高須 直樹神宮 彰武山 大輔松本 秀一石山 智敏鈴木 知信
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2012 年 73 巻 8 号 p. 2078-2082

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抄録

症例は30歳,男性.1カ月前に転倒し左側胸部から側腹部を強打したが,病院を受診しなかった.左上腹部痛と左肩への放散痛があり,当院に救急搬送された.CTで腹部全体に腹水を認めたため,超音波下に腹腔穿刺をしたところ,血性腹水であった.CTでは出血源は同定できなかった.腹痛はほぼ消失しており,バイタルサインも落ち着いていたが,経過観察のため入院とした.
入院翌日のCTでは出血は増加していなかった.第二病日になり,腹部全体に圧痛が広がっていたため,貧血の進行は認めなかったが,手術の方針とした.
腹腔鏡で脾臓付近から出血を認め,上腹部正中切開で開腹した.脾下極付近に実質損傷を認め,脾臓摘出術を行った.病理所見はうっ血と浮腫のみで,血液所見でも白血病や悪性リンパ腫を疑う所見は認めず,遅発性の外傷性脾破裂と診断した.
腹腔鏡による検索が診断に有用であった遅発性外傷性脾破裂の1例を経験した.

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