日本臨床外科学会雑誌
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症例
鼠径ヘルニア偽還納の1例
河岡 徹長島 淳松隈 聰原田 俊夫平木 桜夫福田 進太郎
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2012 年 73 巻 8 号 p. 2115-2120

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抄録

症例は85歳,男性.主訴は右鼠径部膨隆・疼痛.5年前から右鼠径ヘルニアを認めていたが,自己還納していた.今回も脱出時に自己還納したが,その後,右鼠径部の疼痛が強くなり,当院を受診した.来院時,右鼠径部に圧痛を伴う膨隆を認めた.CTで右鼠径部近傍の腹腔内に球状に限局された小腸と腹水の貯留を認めた.絞扼性イレウスを疑い,緊急手術を行ったところ,腹膜前腔がすでに拡がっており,腹膜右側が自然に剥離された状態であった.同部で球状のヘルニア嚢が腹膜前腔に突出しており,壊死小腸と血性腹水がヘルニア内容であった.ヘルニア嚢の末梢は内鼠径輪へ連続しており,外鼠径ヘルニア偽還納と診断した.嵌頓を解除し,壊死小腸切除,McVay法による補強を行った.ヘルニア偽還納は本邦で20例の報告しかなく稀な疾患であるが,早期診断・治療が必須である.ヘルニア罹患歴が長く,自己還納を繰り返すような症例では本症を疑う必要がある.

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© 2012 日本臨床外科学会
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