症例は25歳,男性.幼少時より発達の遅れが見られ,皮膚関節の過伸展や皮膚の脆弱性等の身体所見から,5歳時にEhlers-Danlos症候群(EDS)と診断された.某年10月検診にて貧血を指摘され当院受診.便潜血反応陽性にて下部消化管内視鏡を施行した.S状結腸に亜全周性の2型の腫瘍を認め,生検にて高~中分化型腺癌と診断した.S状結腸切除術(D3郭清)を施行し,一期的に吻合した.術後縫合不全を認めたが,保存的に改善し,術後35日目に退院した.病理組織学的診断はSS,N1,H0,P0,M0,StageIIIaであった.術後イレウスにて3度入院したが,術後3年の現在まで再発なく経過観察中である.EDSは結合組織成分の先天性代謝異常により全身に多彩な臨床症状を呈する稀な遺伝性疾患であり,EDS合併大腸癌においては疾患の特徴を踏まえた術式選択,周術期管理,経過観察が重要である.