2012 年 73 巻 9 号 p. 2352-2356
症例は57歳,女性.心窩部痛,体重減少を主訴に近医を受診.腹部超音波検査にて膵頭部に約6cmの腫瘤を認め,手術目的に当科紹介となった.全身状態は良好で,黄疸や肝機能異常を認めず.腹部は平坦・軟で腫瘍は触知せず.腹部CT・MRIでは膵頭部に約6cm大の多房性・嚢胞性腫瘤を認めた.血液中腫瘍マーカーは正常であった.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の悪性化を疑い,膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した.術後病理にて膵は正常組織であり,膵周囲のリンパ節腫大を認め,乾酪壊死,Langhans巨細胞,類上皮細胞からなる肉芽腫の出現により結核性リンパ節炎の診断に至った.本邦での腹腔内の結核性リンパ節炎は稀であり,多くは免疫不全患者に発症すると報告があるが,本症例は結核の既往もなく生来健康であった.今回膵IPMNを疑い,鑑別が困難であった結核性リンパ節炎の1例を経験したため,文献的な考察を加え報告する.