日本臨床外科学会雑誌
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症例
外科的切除が著効をみたHIV感染症に合併した中毒性巨大結腸症の1例
下園 麻衣志田 大中村 ふくみ谷澤 徹宮本 幸雄井上 暁
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2013 年 74 巻 1 号 p. 118-123

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抄録

中毒性巨大結腸症の要因としては,潰瘍性大腸炎,偽膜性腸炎やCytomegalovirus(CMV)腸炎が多い.これらがいずれも否定的で,HIV感染症の治療中に中毒性巨大結腸症を発症した症例を経験した.症例は27歳男性.HIV陽性に対して経過観察中に,発熱,水様性下痢,腹痛が出現した.CD4+146/μLと低下したため,HAART療法を開始した.CMV腸炎,アメーバ腸炎,細菌性腸炎を考慮し治療を行ったが,改善しなかった.40℃前後の発熱,頻脈,貧血,精神症状,電解質異常も見られ,CTで結腸の著明な拡張,内視鏡検査で全結腸に多発する深掘れ縦走潰瘍がみられた.内科的治療に抵抗性の中毒性巨大結腸症と診断し,外科的切除(結腸亜全摘術+回腸人工肛門造設術)を行った.術後は速やかに解熱し,全身状態も著明に改善した.本症例の中毒性巨大結腸症の発症の要因として,HIV感染そのものの増悪,あるいは,HIV治療中の免疫再構築症候群が考えられた.

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© 2013 日本臨床外科学会
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