日本臨床外科学会雑誌
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症例
多発肝膿瘍を契機に発見されたS状結腸癌の1例
釜田 茂幸山田 千寿新田 宙石川 文彦尾本 秀之伊藤 博
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キーワード: 大腸癌, 多発肝膿瘍
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2013 年 74 巻 10 号 p. 2852-2856

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抄録

肝両葉に多発する肝膿瘍を契機に発見されたS状結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は46歳,男性.発熱,右季肋部痛,高度の炎症所見を指摘され,当院を紹介された.腹部エコー・CTにて肝両葉に低吸収域を認め,多発肝膿瘍の診断で入院した.原因検索の下部消化管精査でS状結腸癌を指摘され,外科紹介となった.抗菌薬投与のみで炎症の改善と肝膿瘍の縮小を認めたため,S状結腸切除術を施行した.経過は良好で,術後14日目に退院した.病理結果ではtub1,ss,ly2,v1,n2,Stage IIIbとの診断で,肝膿瘍の軽快の後に補助化学療法を施行し,術後1年以上経過した現在,再発転移はなく外来フォロー中である.肝膿瘍の原因としては,大腸癌からの経門脈的感染が推測されたが,肝両葉に多発した機序は不明であった.肝膿瘍の診断・治療においては,原因疾患として大腸癌の可能性も念頭に置いた消化管精査を行う必要があると考えられる.

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