2013 年 74 巻 10 号 p. 2935-2938
症例は74歳,男性.約10年前から右鼠径ヘルニアを認めており,脱出のたび自己整復していた.今回,自己整復後に腹痛・嘔吐が出現したため受診した.腹部CT検査で右下腹部に壁側腹膜から連続する嚢状病変の内部に浮腫状の小腸が認められ,鼠径ヘルニア偽還納による絞扼性イレウスと診断して緊急開腹手術を施行した.嵌頓を解除して腹膜前腔にメッシュを留置してヘルニア修復を行った.腸管切除は行わなかった.術後経過は良好で第7病日に退院した.鼠径ヘルニア偽還納は非常にまれな疾患であるが,術前の十分な問診と詳細な腹部CT画像の読影により診断可能であると思われる.