2013 年 74 巻 11 号 p. 3063-3067
症例は39歳,男性.10日間続く下腹部痛・発熱・下痢・嘔気を主訴に来院し,腹部CT検査で腹腔内膿瘍を認め,穿孔性虫垂炎による膿瘍形成の診断で入院となった.入院時は症状が軽減しており,抗菌薬投与による保存的加療を行ったが,第7病日の腹部超音波検査で門脈本幹から右枝に血栓形成を認めた.虫垂炎に起因する門脈血栓症と診断し,ヘパリンの持続投与を開始した.その後,発熱・炎症反応の増悪を認め手術を検討したが,患者の手術の同意が得られず保存的加療を継続した.抗菌薬投与開始後約4週間で炎症反応の改善を認めた.第30病日の腹部超音波検査で門脈血栓は消失し,ヘパリン投与を中止し,第42病日に退院となった.その後,血栓の再発を認めていない.
門脈血栓はまれな疾患であるが,膿瘍を伴うような重症な虫垂炎で併発する可能性があり注意が必要である.