2013 年 74 巻 11 号 p. 3092-3097
症例は65歳,女性.発熱および腹部膨満症状で近医受診,CT検査で直腸に腫瘍性病変を指摘され当院紹介受診となった.WBC/CRP=13,900/5.48と炎症反応の上昇を認め,下部内視鏡および注腸造影検査にて直腸の狭窄を認めた.子宮内避妊具(intrauterine contraceptive device,以下IUD)の使用歴より骨盤放線菌症を疑い抗菌薬投与を開始するとともにIUD抜去術を施行,その際の細胞診にて放線菌症の確診を得ることができた,6カ月間にわたる抗菌薬投与により症状および直腸狭窄の改善が得られ,その後16カ月間再発は認めていない.骨盤放線菌症は初期段階での手術治療は多臓器切除となる可能性が高く過大な侵襲となることがある.長期抗菌薬で治癒する可能性もあり,手術適応に関して慎重に検討する必要がある.