2013 年 74 巻 11 号 p. 3220-3224
症例は60歳台,女性.間欠的腹痛と嘔吐を主訴に来院となった.下腹部に軽度の圧痛を認めるも,腹膜刺激症状等認めなかった.帝王切開の既往があり,腹部CTにて小腸の拡張を認めたため,癒着性イレウスと診断し入院とした.入院後,約3時間より腹痛増悪し,筋性防御が出現したため絞扼性イレウスの可能性を考え,緊急手術とした.開腹したところ,下行結腸間膜に左結腸動脈と下腸間膜動脈が辺縁を形成する異常窩が存在し,同部がヘルニア門となって小腸が腎前傍腔に脱出・嵌頓していた.嵌頓を愛護的に解除し,左結腸動脈を切離してヘルニアサックを大きく開放した.嵌頓した小腸は全体的にうっ血・拡張していたが,壊死を疑わせる所見は認めなかったため,腸管の切除は行わなかった.術後経過は良好で第14病日に退院となった.
結腸間膜ヘルニアは成人では手術の合併症として発症する裂孔ヘルニアの形態をとることが多く,手術に関連しない下行結腸間膜窩ヘルニアの報告は極めて稀である.若干の文献的考察を加えて報告する.