日本臨床外科学会雑誌
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症例
薬物療法により症状が改善した乳癌の髄膜癌腫症の1例
山崎 由紀子小谷 勝祥松山 孝昭宇野 雄祐鈴木 和志河原 健夫
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キーワード: 乳癌, 髄膜癌腫症, 薬物療法
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2013 年 74 巻 12 号 p. 3263-3267

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抄録

症例は48歳,女性.主訴は上肢の脱力感と痺れであった.精査で左乳癌cT2N1M1(肝,髄膜)ER+PR+HER2-と診断した.約2週間で急速に症状は悪化し,全身の痛み,両上下肢筋力低下による歩行困難,左視力低下,左眼球内転障害,嚥下障害による誤嚥性肺炎を併発した.放射線治療は照射範囲が全脊髄に及ぶことより適応外と判断し,薬物療法を開始した.タモキシフェンLH-RH アナログの投与と大量メソトレキセート(MTX)静注により症状は徐々に改善し,1.5カ月の入院後車いすで退院した.計4クールの大量MTXと5クールのCMF療法(cyclophosphamide,methotrexate,5-FU)を施行後,自力歩行可能な状態となり,内分泌療法単独で経過観察となった.化学療法終了後4カ月で右下肢脱力の軽度の悪化を認めたためCMF療法を再開,発症後1年7カ月の現在,安定した状態で外来通院加療中である.

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© 2013 日本臨床外科学会
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