日本臨床外科学会雑誌
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症例
6cmの有鈎義歯誤嚥による食道穿孔の1例
濵崎 景子福岡 秀敏石川 啓角田 順久
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2013 年 74 巻 12 号 p. 3286-3291

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抄録

症例は55歳,男性.精神発達遅滞にて施設入所中であった.2012年4月,発熱と嘔吐を認め近医受診.胸部単純写真にて食道内に義歯を認め,頸胸部CTにて頸部食道から胸部上部食道にかけて嵌頓した義歯と,食道周囲の縦隔気腫を認めた.食道異物による食道穿孔の診断にて,緊急手術を行った.まずは硬性食道鏡下異物除去を試み,頸部食道まで引き上げたが,鈎が食道粘膜に食い込み抜去困難であったため,頸部外切開による食道異物摘出術に移行した.食道切開部はGambee縫合で閉鎖した.左右縦隔内にドレーンを挿入し,腸瘻造設・気管切開を行った.
義歯誤嚥の多くは自然排泄や内視鏡的摘出などが期待できるが,蟹爪状の鈎(クラスプ)を有したブリッジ状の大型有鈎義歯は,鈎が咽頭や食道などの消化管粘膜を損傷,刺入して停滞することもまれではない.また,その形状から内視鏡的摘出が困難な症例も見られる.

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