2013 年 74 巻 12 号 p. 3311-3315
症例は82歳,男性.頻回の嘔吐を主訴に前医を受診した.胃癌を指摘され加療目的に当院に紹介となった.上部消化管造影検査では食道胃接合部は横隔膜上に位置しており,さらに全胃は主として臓器軸方向に捻転し脱出したいわゆるupside down stomach像を呈していた.上部消化管内視鏡検査では,胃体部小彎前壁に3型病変を認めた.生検では低分化腺癌であった.腹部造影CTでは領域リンパ節に長径11mm大のリンパ節を2個認め転移が疑われたが遠隔転移は認めなかった.以上よりupside down stomachを合併した胃癌と診断し,腹腔鏡下に幽門側胃切除および食道裂孔縫縮術を施行した.術後経過は良好で術後19日目に退院となった.現在再発と愁訴もなく外来通院中である.Upside down stomachを合併した胃癌症例に対する腹腔鏡手術の報告は少なく,文献的考察を加えて報告する.