2013 年 74 巻 12 号 p. 3316-3320
患者は81歳の男性で体重減少を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で幽門輪直上に胃粘膜下腫瘍を認め,その頂部には腺開口部を有しており,超音波内視鏡で胃粘膜下異所腺が疑われた.腺開口部からの生検で高分化型腺癌が検出され,胃粘膜下異所腺を発生母地とした胃癌と診断し,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.病理学的にも,胃粘膜下異所腺の癌化と診断された.リンパ節転移・脈管侵襲は認めなかった.胃粘膜下異所腺の癌化は比較的まれであり,今回,胃粘膜下異所腺の発生機序に着目し,癌化との関係,治療方針についての考察を加え報告する.