日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡手術を施行した腸間膜動静脈奇形を併存したS状結腸憩室出血の1例
古角 祐司郎石井 正之東山 洋三浦 晋上原 徹也山本 正之
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2013 年 74 巻 12 号 p. 3386-3391

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抄録

症例は下血を主訴とする76歳男性.開腹歴や腹部外傷の既往なし.下部消化管内視鏡ではS状結腸に多量の凝血塊と多発憩室を認めた.下腸間膜動脈の血管造影では,S状結腸動脈の末梢に動静脈奇形を形成し,その部位より口側の辺縁静脈は拡張していた.下腸間膜静脈は描出されなかった.以上より,下腸間膜動脈領域の動静脈奇形により間膜内の静脈が拡張・瘤化し,憩室近傍の静脈圧が上昇し憩室出血を繰り返すという病態と考えられた.下血の持続と貧血の進行を認めたため,腹腔鏡下S状結腸切除を施行した.症状は改善し,術後4カ月のCT検査では腸間膜内のAVMや拡張した辺縁静脈は消失していた.下腸間膜動脈領域の動静脈奇形は稀であり,また,腸間膜動静脈奇形を合併した憩室出血の報告例はこれまでになく,文献的考察を加えて報告する.

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© 2013 日本臨床外科学会
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