日本臨床外科学会雑誌
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症例
保存的治療で軽快した門脈ガス血症を伴う非閉塞性腸管虚血の1例
岩瀬 まどか宮田 完志湯浅 典博竹内 英司三宅 秀夫小林 陽一郎伊藤 茂樹
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2013 年 74 巻 2 号 p. 537-543

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抄録

症例は84歳,男性.高血圧,脳梗塞,認知症のために介護施設に入所中であった.嘔吐,下血を主訴に当院を受診し,発熱,頻脈と血液検査で炎症反応上昇を認め,CTで門脈ガス,右下腹部腸管の壁肥厚,腹水を認めた.腸管壊死を疑ったが,高齢,多数の併存症をもつことから耐術困難と考え保存的治療を行った.全身状態は徐々に改善し,第9病日から経口摂取を開始し,第55病日に介護施設に転院した.発症13時間後と第8病日の3D-CT angiographyから,非閉塞性腸管虚血(non-occlusive mesenteric ischemia;NOMI)に伴う門脈ガス血症が保存的治療で改善したと考えた.保存的治療が奏効した門脈ガス血症を伴うNOMIの本邦報告は自験例を含め5例であった.門脈ガス血症を伴うNOMIであっても,初療の後に全身状態・腹部所見・画像所見の改善がみられれば,保存的治療が奏効する可能性がある.

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© 2013 日本臨床外科学会
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