2013 年 74 巻 3 号 p. 645-649
症例は63歳,女性.健診で胸部異常陰影を指摘され当科紹介となった.胸部CTで前縦隔に腫瘤影を認め,右肺,両側腕頭静脈,上大静脈への浸潤と胸膜播種が疑われた.CTガイド下生検で胸腺腫の診断を得たため手術を施行することを決定した.手術はまず仰臥位胸骨正中切開にて開始し,胸腺を可及的に剥離した後,両側腕頭静脈,上大静脈を人工血管で置換し閉創した.左側臥位に体位変換の後,前方腋窩切開第5肋間開胸で右肺上中葉切除を追加し,肺と胸腺および腫瘍を一塊として切除した.次いで胸膜播種巣を可及的に切除し閉胸,手術を終了した.現在術後6年,胸腺腫の再発は認めていない.IVa期胸腺腫に対しても,肉眼的完全切除を目指し手術を施行するのも一つの選択肢であると思われた.