2013 年 74 巻 3 号 p. 719-723
患者は73歳,男性.腹痛を主訴に来院.腹部手術歴なし.腹部CT検査にてイレウスの診断で入院となる.イレウス管を挿入し腸管減圧を施行した.イレウス管造影を行うと回腸に腫瘍による閉塞を疑う所見を認め手術適応と判断した.腹腔鏡にて腹腔内を観察すると,回腸に腫瘍による閉塞を認め腫瘍は漿膜側に露出し横行結腸に浸潤していた.腹腔内全体に腹膜播種を疑う白色小結節を認めた.開腹に移行し回腸および横行結腸部分切除術を施行した.白色結節は一部摘出生検を施行し提出した.病理学的検査では,腫瘍および白色結節は多量の粘液の中に腺癌が浮遊している像を認め回腸原発粘液癌se,n0,H0,P3,M0 stage 4と診断した.合併症なく退院し外来にて大腸癌に準じて化学療法を施行している.開腹歴のない小腸イレウスの場合,稀ではあるが原発性小腸癌によるイレウスを考慮しイレウス管による減圧および精査が必要と考えられた.