日本臨床外科学会雑誌
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症例
門脈ステントが有効であった膵癌術後再発の門脈狭窄による消化管出血の1例
久保 孝文櫻井 淳井原 弘貴津村 朋子鈴鹿 伊智雄
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2013 年 74 巻 3 号 p. 806-811

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抄録

症例は49歳,女性.膵頭部癌に対し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除,D2郭清,IIA-1再建術施行後,約1年8カ月後に激しい下血,貧血にて当科緊急受診した.腹部ダイナミックCT検査にて,膵癌局所再発を疑わせる腸間膜腫瘤による門脈の圧排狭窄と,胆管空腸吻合部周囲に拳上空腸静脈瘤を認めた.また上部消化管内視鏡検査で胆管空腸吻合部の空腸側粘膜に易出血性の露出血管を認めた.門脈狭窄により求肝性側副血行路として発達した胆管空腸吻合部静脈瘤からの破綻出血と診断し,開腹経回結腸静脈門脈ステント挿入術を施行した.ステント挿入後,門脈造影にて求肝性側副血行路は消失し,消化管出血も消失した.術後抗凝固療法を開始し,数日で当科退院となった.膵頭十二指腸切除後,膵癌再発の門脈狭窄による胆管空腸吻合部静脈瘤出血に対し門脈ステント挿入が有効であった1例を経験したため報告する.

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© 2013 日本臨床外科学会
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