2013 年 74 巻 5 号 p. 1215-1219
症例は67歳,女性.血栓閉塞型A型急性大動脈解離で腹腔動脈が解離していた.降圧治療中に腹痛と血中アミラーゼの上昇が生じ,CT検査では脾動脈が閉塞しており臓器虚血による急性膵炎を発症した.さらに膵の虚血が進行し体部と尾部は壊死性膵炎となったが集学的治療により回復した.発症2カ月後に上行大動脈の偽腔の拡大とULP形成が生じたため上行大動脈人工血管置換を行った.急性大動脈解離の腹部臓器虚血において急性膵炎発症の可能性を念頭に置き,腹腔および脾動脈が閉塞した症例では重症化が予想されることを認識する必要がある.