2013 年 74 巻 5 号 p. 1261-1264
症例は75歳の男性で21年前に早期胃癌に対して,幽門側胃切除術を施行し,Billroth-I法で再建した.このときの病理結果は印環細胞癌であった.今回上腹部痛と違和感を主訴として受診し,上部消化管内視鏡検査で胃十二指腸吻合部の口側胃粘膜に隆起性病変を認めた.生検にて低分化腺癌の診断となり,遠位側残胃切除術を施行し,Roux-en-Y法で再建した.切除標本の病理組織学的検索でH-E染色に加えて免疫組織染色検査を行い,診断は胃未分化癌で深達度smであった.胃未分化癌は非常にまれで,報告例のほとんどが進行癌である.われわれが検索した限りにおいて,残胃に発生した早期胃未分化癌の報告例はなく,極めてまれであると考えられた.