日本臨床外科学会雑誌
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症例
腸間膜穿通との鑑別が困難であった腸管嚢腫様気腫症の1例
吉村 昌記硲野 孝治外山 和隆戸口 景介吉川 健治山口 拓也
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2013 年 74 巻 5 号 p. 1300-1306

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抄録

症例は80歳,男性.気管支喘息にてプレドニゾロンを長期内服していた.腹痛を主訴に受診し,腹部CTにて腸管の壁内気腫,散在する結腸憩室,小腸間膜気腫を認めたが,腹腔内遊離ガスと門脈内ガスは認めなかった.結腸憩室の腸間膜穿通と診断し,開腹手術を施行した.拡張し著明に蛇行した回腸を認め,同部の腸間膜に握雪感も認めたため回腸部分切除術を施行した.病理所見より腸管嚢腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis;PCI,以下PCI)による腸間膜気腫と診断された.PCIは消化管穿孔がない腹腔内遊離ガスをきたすことがある.しかし腸間膜への穿通と鑑別が困難であったPCIの報告は稀有である.腸間膜気腫を認め消化管の小腸間膜穿通を疑った際には回腸憩室や異物誤嚥,悪性腫瘍などが鑑別診断として挙がるが,今回の腸間膜気腫の成因はPCIであり,極めてまれな病態であった.

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