2013 年 74 巻 6 号 p. 1483-1487
症例1は74歳,男性.1996年(62歳時)に左肺門部小細胞癌に対し線量45Gyの化学放射線療法(CRT)を施行し,以後再発はなかった.2008年に胸部上部食道に表在癌を認め,右開胸食道切除術を施行した.病理所見は扁平上皮癌,T1b(SM3)N0M0,Stage Iであった.術後3年6カ月無再発経過観察中である.症例2は61歳,男性.1990年(41歳時)に左肺門部小細胞癌に対し線量 60GyのCRTを施行し,再発はなかった.2010年に胸部上部食道に表在癌を認め,右開胸食道切除術を施行した.病理所見は扁平上皮癌,T1b(SM2)N0M0,Stage Iであった.術後2年無再発経過観察中である.本症例は肺癌に対するCRT後の放射線誘発食道癌である可能性が考えられた.CRT後の食道癌の治療選択は全身状態を十分考慮して行い,手術時は縦隔内の瘢痕化や周囲臓器の血流障害への配慮が必要である.