日本臨床外科学会雑誌
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症例
イレウスを契機に診断された乳癌小腸転移の1例
高橋 保正関川 浩司後藤 学成田 和広太田 竜池田 博斉
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2013 年 74 巻 7 号 p. 1787-1792

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抄録

今回われわれはイレウスで発症した乳癌小腸転移1切除例を経験したので報告する.症例は70代,女性.9年前に右乳癌にて右乳房切除術を受けている.組織型は硬癌でStage IIB(T2N1)であった.今回はイレウス症状にて入院.小腸造影にて回腸の原因不明の狭窄を認め第7病日に腹腔鏡補助下手術を施行した.手術所見ではバウヒン弁より口側1mの回腸に小腸壁の全周性肥厚を認め切除した.摘出標本の病理所見では乳癌由来と考えられる核異型の強い腫瘍細胞が漿膜下組織を中心に増殖し粘膜面にまで達していた.免疫組織学的にはER陽性,PgR陰性,Her2/neu蛋白は陽性であり初回の切除標本の組織所見と一致したため,乳癌の小腸転移によるイレウスと最終診断した.術後経過は良好で術後17日目に軽快退院したが術後83日目に癌性悪液質にて死亡した.乳癌の小腸転移はその末期時期に生じる場合が多く,外科的治療の対象となることは少ない.

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