日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
CTにて穿孔部位を同定した鼠径ヘルニア合併外傷性小腸穿孔の1例
勝田 美和子山下 直行萩原 信敏進士 誠一秋丸 琥甫内田 英二
著者情報
キーワード: 鼠径ヘルニア, 小腸穿孔, CT
ジャーナル フリー

2013 年 74 巻 7 号 p. 1872-1875

詳細
抄録

症例は65歳,男性.ソフトボールの試合中,ダイビング・キャッチした直後より左鼠径部を中心に下腹部痛が出現した.腹痛が続くため受傷後4日目に近医を受診し,イレウスが疑われ外科紹介となった.腹部は膨隆し全体に圧痛を認めたが,反跳痛,筋性防御はなかった.左鼠径ヘルニアを認めたが嵌頓はしていなかった.腹部X線検査にてfree airを認めなかったが,CT検査にて腹水と小腸に穿孔部を認め,汎発性腹膜炎の診断にて同日緊急手術を施行した.腹腔内には混濁した腹水があり,小腸は全体に発赤と腫脹が著明で,回腸の腸間膜対側に1cm大の穿孔部を認めた.機序としては,腹部打撲によって急激に腹圧が上昇し,小腸がヘルニア嚢内で破裂したと考えられた.小腸穿孔は腹膜刺激症状やfree airが出現しにくいこともあり,診断が困難な場合が多いが,本症例はCTにて腸管壁の断裂をとらえることができ,確診しえた稀少な症例であった.

著者関連情報
© 2013 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top