2013 年 74 巻 7 号 p. 1956-1961
症例は65歳,男性.腹部腫瘤,敗血症疑いとして当院紹介となった.腹部CT検査では回盲部付近に腹腔内腫瘤を認め,前腹壁と連続し皮下には巨大な膿瘍を形成していた.入院後に皮下膿瘍を切開ドレナージし,抗生剤を開始.下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に1型腫瘍を認めた.皮下膿瘍が軽快した後も,発熱,消耗状態が続き,腹腔内腫瘤は増大傾向を示すため,切除術を施行した.回盲部およびS状結腸が腫瘤と癒着しており浸潤が疑われたため同部を合併切除した.盲腸およびS状結腸の内腔には類似した1型腫瘍を認めた.病理組織学的所見では盲腸およびS状結腸の腫瘍は高分化腺癌であり,腹腔内腫瘤もそれらと連続して同様の組織像を呈していた.S状結腸に粘膜病変が認められたことから,S状結腸癌が壁外性発育を示し,腹腔内腫瘤を形成して盲腸に浸潤したものと考えられた.壁外性発育を示す大腸癌が皮下膿瘍を形成した極めてまれな症例であった.