2013 年 74 巻 8 号 p. 2183-2187
7年間で2回特発性小腸穿孔を発症した1例を経験したので報告する.症例は39歳男性で昼食摂取後,腹痛症状が増悪し来院した.既往歴に32歳時に原因不明の小腸穿孔,33歳時に絞扼性イレウスで手術歴がある.腹部造影CT検査で明らかなfree airは認めなかったが,Douglas窩に著明な腹水を認め,急性汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.小腸に径1cmの穿孔を認め小腸部分切除を施行した.術後経過は順調で,術後第15病日に退院した.病理組織所見で小腸穿孔部は全層にわたり断裂し,炎症細胞の浸潤は見られたが,肉芽組織や線維化などは見られなかった.粘膜は漿膜側に向けてslidingしていなかった.その他,虚血や異物等の所見を認めず,特発性腸管穿孔と診断した.前回の小腸穿孔の組織を再検討したところ,同様の所見であり特発性小腸穿孔と診断した.