2013 年 74 巻 9 号 p. 2394-2398
症例は50代,男性.前胸部痛出現2カ月後に受診.胸部CTで胸骨腫瘍指摘,PET-CTで胸骨と左第6肋骨に異常集積を認めた.胸骨生検で腺癌骨転移と診断,精査加療目的に当科紹介.諸検査では原発巣を同定できず,胸部打撲の既往と肋骨骨破壊像がないことより,原発不明癌の孤立性胸骨転移と考え,肉眼的完全切除と疼痛緩和目的に,胸骨切除およびComposix meshと4重のMarlex mesh(共にBard社製)を用い胸骨を再建した.切除検体からも原発の同定は出来ず.術後1カ月半のPET-CTで左第6肋骨骨破壊像を含む多発骨転移巣が出現.Second lineまで化学療法施行も骨病変悪化,病的骨折をきたし,術後半年で永眠された.原発不明癌は予後不良疾患であり,予後延長効果は不明であるが,疼痛緩和目的の局所治療としては妥当と考えた.孤立性胸骨転移に対する胸骨切除の報告はなく,手術適応に関しては議論の余地がある.