2013 年 74 巻 9 号 p. 2464-2469
症例は70歳台,男性.心窩部痛を主訴に近医受診.精査の結果,胃噴門癌と診断され,加療目的に紹介受診となった.当科にて施行した上部消化管内視鏡検査での腫瘍からの生検では小細胞癌の診断であった.手術加療の方針とし胃全摘術を施行した.術後の病理検査にて腫瘍の主成分は術前の生検で指摘されていたように小細胞癌であったが,一部に横紋筋肉腫で構成された部分が認められた.また腫瘍に通常の腺癌の成分は認められなかった.術後病期はpT3N1M0 pStage III Aであった.現在術後7カ月であるが,無再発生存中である.胃小細胞癌はかなり稀な腫瘍で胃癌の0.1~0.95%とされている.また胃横紋筋肉腫は現在までに約50例の報告が為されている稀な疾患である.胃小細胞癌に横紋筋肉腫を伴う症例は現在までに2例が報告されているだけである.本症例は非常に稀少であると思われたため若干の学術的考察を加え報告する.