日本臨床外科学会雑誌
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症例
右胃大網動脈による冠状動脈バイパス術後に肝切除術を施行した1例
國府島 健渡邉 佑介遠藤 芳克渡邉 貴紀甲斐 恭平佐藤 四三
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2013 年 74 巻 9 号 p. 2567-2571

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抄録

右胃大網動脈(RGEA)を使用した冠状動脈バイパス術(CABG)後に発生した肝細胞癌に対して肝後区域切除術を施行した1例を経験した.症例は78歳男性.平成13年に心筋梗塞にて他院で左内胸動脈,大伏在静脈,RGEAをグラフトに用いてCABG施行された.平成25年2月,C型慢性肝炎を背景とした肝細胞癌の診断で当科紹介となり,肝後区域切除を施行した.RGEAグラフトは肝表面や肝円索などと癒着していたが,開胸を加えることでグラフトをほとんど触る必要なく手術を施行しえた.術中,術後に合併症は認めなかった.RGEA使用CABG後の上腹部手術は,グラフトと周囲の癒着剥離による損傷や,圧迫などの機械的刺激によるスパスム(攣縮)によって心原性ショックになる可能性がある.術前の心機能やグラフトの評価,術中は注意深く愛護的な手術操作が要求される.

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