2013 年 74 巻 9 号 p. 2577-2581
症例は73歳,男性.総胆管結石に対して内視鏡的乳頭切開切石術の既往あり.肝機能障害とCRP高値にて当院紹介となる.腹部CTにて,胆嚢結石と胆嚢壁肥厚および胆嚢周囲腹壁の低濃度腫瘤を認め,腹壁膿瘍を伴う急性胆嚢炎と診断され入院となる.保存的に加療するも軽快せず.造影CTにて,腹壁膿瘍の増大と門脈臍部から左右分岐部および右前区域枝内に低濃度構造物を認めた.急性胆嚢炎が原因となった門脈血栓と診断した.胆嚢炎に対して腹壁膿瘍ドレナージや抗生剤投与など保存的加療を施行し,門脈血栓は画像にて経過観察した.胆嚢炎は軽快し,門脈血栓は臍部のみが残存した.門脈血栓の伸展のないことを確認した上,待機的に開腹下胆嚢摘出術を施行した.開腹時,胆嚢結腸瘻を認めたため結腸楔状切除を施行した.術後,創部感染を合併したが術30日目に軽快退院となる.急性胆嚢炎が原因となった門脈血栓症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.