日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下肝部分切除術で診断した非結核性抗酸菌症による肝膿瘍の1例
松浦 正徒波多野 悦朗石井 隆道藤本 康弘水本 雅己上本 伸二
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2014 年 75 巻 1 号 p. 179-183

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抄録

症例は49歳,女性.急性骨髄性白血病に対する化学療法後に発熱と炎症反応の上昇を認め,PET/CTで多発肝膿瘍と診断された.超音波下経皮的肝生検では起炎菌同定に至らず,臨床経過から真菌性肝膿瘍と診断し,抗真菌剤治療を行ったがCRPは陰性化しなかった.PET/CTで肝膿瘍の増悪を認めたため,起炎菌同定,感受性確認目的で腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.肝表面に白色瘢痕を数箇所認め,3箇所を肝部分切除した.
病理組織学的検査で乾酪壊死を伴った類上皮細胞肉芽腫を認め,Ziehl-Neelsen染色で抗酸菌を検出した.クォンティフェロンTB検査が陰性であり他の培養検査で菌種の同定ができず,非定型抗酸菌症と診断し4剤併用療法で治療した.炎症所見は軽快し,術後4カ月で同種末梢血幹細胞移植を施行し,経過良好である.
超音波下経皮的肝生検による起炎菌の同定は容易ではなく,確定診断に至らない場合,腹腔鏡下肝部分切除による病因診断が有用である.

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© 2014 日本臨床外科学会
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