2014 年 75 巻 1 号 p. 190-196
25歳,女性.急性腸炎で近医を受診,超音波検査で肝腫瘍を指摘された.既往歴では輸血,経口避妊薬,ステロイドの使用歴なし.11歳時に卵巣嚢腫摘出術歴あり,第1子出産後1年であった.血液生化学検査では肝炎ウイルスマーカー陰性で肝機能異常は認めず.AFPは正常値であったが,PIVKA-IIは329 mAU/mlと高値であった.CT検査で肝外側区域に造影効果をもつ直径3.2cmの腫瘍像を認め,超音波検査では腫瘍の内部は高エコー,辺縁部は低エコーであった.肝生検では高分化型肝細胞癌が疑われた.肝部分切除を施行し,術後経過は良好であった.病理組織検査では背景肝に線維化なく,腫瘍部は細胞異型が軽度で肝腺腫との鑑別診断が困難であったが,細胞密度の増加,類洞内皮の毛細血管化(CD34陽性)および間質への浸潤像を認め,高分化型肝細胞癌と診断した.