日本臨床外科学会雑誌
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症例
治療方針決定に造影CTが有用であったシートベルト外傷性乳房内出血の1例
荒田 了輔大原 正裕今岡 祐輝野間 翠大石 幸一板本 敏行
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2014 年 75 巻 10 号 p. 2698-2701

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抄録

3点式シートベルトの普及により臓器損傷による死亡例は激減したが,新たな受傷機転による損傷が見られるようになった.今回,シートベルト外傷による乳房内出血に対して,造影CTにより出血部位の同定が可能であり,緊急手術を行った症例を経験した.症例は47歳の女性.三点式シートベルトを装着して軽自動車を運転中に直進対向車と正面衝突し救急搬送された.搬送時,左乳房は膨隆,緊満し,乳房の圧迫を行っても乳房腫脹の持続的な進行を認めた.緊急造影CTにて左乳房内に造影剤の血管外漏出を認めたため,局所麻酔下に緊急止血手術を行った.内胸動脈の穿通枝破綻部から拍動性の動脈性出血を認め,結紮止血を行った.術後創部の感染や瘢痕形成もなく整容性も良好に保たれていた.乳房外傷により乳房腫脹の持続的な進行を認める場合には動脈破綻による活動性出血を疑い,緊急造影CTにて治療方針を決定すべきである.

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