日本臨床外科学会雑誌
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症例
挙上空腸分離術を行った胃全摘術後縫合不全による難治性瘻孔の1例
福田 泰也平尾 素宏藤谷 和正山本 和義西川 和宏関本 貢嗣
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キーワード: 胃全摘術, 縫合不全, 膿胸
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2014 年 75 巻 10 号 p. 2744-2750

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抄録

症例は66歳の男性.2013年3月に当科で胃癌に対して胃全摘術(Roux-Y再建)を施行した.術後5日目に呼吸状態が悪化し,食道空腸吻合部の縫合不全により膿胸を併発していることが判明した.胸腔ドレナージの上抗生剤加療を開始したが,40℃超の高熱が持続し,胸腔ドレーン排液の培養検査と血液培養検査で同一のメタロβラクタマーゼ産生菌が検出された.縫合不全部への消化液逆流のため菌血症を脱せず,術後51日目に全身麻酔下で挙上空腸分離術(非離断)と腸瘻造設術を施行した.胸腔ドレナージ,抗生剤加療を継続するとともに,腸瘻からの経管栄養も開始して栄養改善を図ることで,術後69日目に菌血症を脱し,術後106日目には縫合不全部の治癒が確認できた.非離断部も自然に再開通し,術後118日目に軽快退院した.胃全摘術後縫合不全による難治性瘻孔に対して,挙上空腸分離術が転機となって救命しえた1例を経験したので報告する.

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© 2014 日本臨床外科学会
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