2014 年 75 巻 10 号 p. 2751-2756
症例は70歳,男性.腹部超音波検査にて腹腔内に腫瘤を指摘され上部消化管内視鏡施行.胃前庭部大弯前壁に粘膜下腫瘍様,径3cm大の腫瘍を認めた.生検で低分化腺癌と診断された.胃亜全摘,胆嚢摘出術を施行した.病理で上皮性マーカーであるCAM5.2陽性,神経内分泌のマーカーであるシナプトフィジンがほぼ全ての細胞に染色され内分泌細胞癌と診断された.腺腔形成性の腺癌の共存は認めなかった.Ki67 indexは80%以上であり高度と考えられた.pT1(SM2) N1(No.6) M0であった.術後1年間のS-1の内服を行い,現在術後6年6カ月経過し無再発生存中である.胃原発の内分泌細胞癌は稀な疾患で,予後は極めて不良とされているが今回われわれはリンパ節転移を有した胃内分泌細胞癌に対し手術による治癒切除と,術後化学療法を行い6年6カ月無再発の症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.