2014 年 75 巻 10 号 p. 2824-2827
症例は83歳の男性で,10カ月前にRsの直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除を施行した(SM,N1(1/14),M0 Stage IIIa).術後の経過に異常は認めていなかったが,臍の下方に径3.5cmほどの腹部腫瘤を自覚して外来を受診した.腫瘤は超音波エラストグラフィーで硬く描出され,造影CTでは腫瘤内部は淡く造影された.また,MRI拡散強調画像で高信号を呈した.吸引細胞診は陰性であったが,担癌患者であったことより直腸癌術後のポートサイト再発を疑い摘出術を行った.病理組織学的には腹直筋腱膜に炎症を及ぼす肉芽腫であり,異物は確認されなかったもののSchloffer腫瘤の診断となった.さらに,2カ月後に左下腹部のポートサイト付近に同様な3.0cm大の皮下腫瘤が急に出現したが,炎症性肉芽腫を疑って腫瘤切除を行った.癌の腹壁転移とSchloffer腫瘤は鑑別に苦慮する場合があり,今回はポートサイトに発生したことから若干の文献的考察を加えて報告する.