2014 年 75 巻 11 号 p. 3158-3163
症例は73歳,女性.交通外傷後に健忘を発症し精査目的で入院となった.入院時の血液検査所見でWBC 23,690/μl,CRP 21.6と高値であった.造影CT検査にて多発性脾膿瘍と診断された.保存的治療では炎症所見は軽快せず脾摘出術を施行した.術後炎症反応は軽快したが,イレウスを発症し,開腹術を施行した.回腸終末に硬化と狭窄を認めイレウスの原因病巣と判断し,回盲部切除を施行した.切除標本では全周性の単純性潰瘍であった.ステロイドの長期投与による免疫機能が低下した状態に,小腸潰瘍から菌血症を発症し,脾臓に多発性膿瘍を形成したと考えられた.遷延する炎症症状に対し,脾摘出術が有効であった.