日本臨床外科学会雑誌
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症例
約50年後に後腹膜再発したと考えられた卵巣奇形腫の1例
後野 礼小野 朋二郎覚野 綾子興津 茂行山中 若樹
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2014 年 75 巻 12 号 p. 3354-3357

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抄録

72歳,女性.20歳頃に左卵巣奇形腫切除の既往あり.2009年9月の腹部単純CTで後腹膜腫瘍を指摘されたが経過観察とされた.2012年4月の腹部造影CTで増大傾向を認めたため,手術目的に当科紹介となった.CTでは大動脈左側の左腎下極レベルに51mm大の造影効果良好な多房性嚢胞性腫瘤を認めた.後腹膜腫瘍の診断で腹腔鏡下に切除術を施行した.術中所見では周囲への浸潤はなく,腫瘍の栄養血管は左卵巣動脈から分岐していた.肉眼所見は表面平滑で軟らかく,内部に隔壁を有し,内容はコロイド様の液体であった.病理所見では甲状腺濾胞組織のみであったが,術後の甲状腺精査では異常所見を認めず,甲状腺腫瘍の転移は否定的であった.甲状腺の発生学的考察からは後腹膜に甲状腺組織が発生することは考えにくく,今回の症例で栄養血管が左卵巣動脈であったことや左卵巣奇形腫の切除既往があることなどから,卵巣奇形腫の後腹膜再発と診断した.

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© 2014 日本臨床外科学会
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