2014 年 75 巻 2 号 p. 432-436
64歳,女性.発熱にて当院に救急搬送され,補液を受け帰宅するも,発熱持続し,再受診したところ,炎症反応および肝胆道系酵素の上昇を認め,CTにて肝外側区に肝膿瘍が指摘され入院した.血液培養にてKlebsiella pneumoniaeが検出され,抗生剤投与を行った.胆道系疾患なく,侵入門戸検索目的に消化管精査を行ったところ,下部消化管には異常なく,上部消化管に多発する胃癌を認めた.肝膿瘍の軽快退院後26日目に胃切除を行った.病理診断は胃角部の2型進行胃癌とその周囲に広がるIIa病変,さらに前庭部のIIc病変を認め,リンパ節転移なくpStage Ibであった.胃癌と肝膿瘍の合併報告例は少なく,mucosal barrierの破壊が原因による経門脈性感染による膿瘍形成と推測されている.胆道系疾患のない肝膿瘍の診断・治療に際しては全消化管の精査は重要である.