2014 年 75 巻 2 号 p. 516-520
気腫性胆嚢炎は通常,胆嚢内腔のガス像から診断されることが多い.胆嚢内腔にガスを認めず,腹腔内遊離ガスを伴った気腫性胆嚢炎の1例を経験したので報告する.症例は88歳女性で,腹痛を主訴として来院した.腹腔内遊離ガスを認めたため消化管穿孔を強く疑い緊急手術を施行した.消化管穿孔はなく,壊疽性胆嚢炎による汎発性腹膜炎と診断し胆嚢摘除,術中胆道造影を施行した.胆嚢,胆管内には結石を認めず無石胆嚢炎であった.CTにて胆嚢内腔にはガス像を認めなかったが,胆嚢壁内に小泡状ガス像を認めたため気腫性胆嚢炎と診断した.気腫性胆嚢炎の本邦報告例の中では,胆嚢内腔にガス像を認めない例は最近15年間に5例と稀である.一般に腹腔内遊離ガスを伴う急性腹症は消化管穿孔によるものが多いが,気腫性胆嚢炎も鑑別に挙げるべきであり,その際,胆嚢内腔を除いたガス分布像になりうることも念頭に置く必要があると思われた.