2014 年 75 巻 3 号 p. 793-797
症例は58歳,女性.近医にて肝機能異常を指摘され当院へ紹介された.採血にて軽度の肝機能異常を呈し,CTでは中下部胆管の壁肥厚を認めた.MRCPでは下部胆管に先細りを伴う胆管狭窄を呈し,経皮経肝胆管造影でも中部胆管から下部胆管にかけての先細りを伴った完全閉塞像を認めた.中下部胆管癌を疑い膵島十二指腸切除を施行した.切除標本では狭窄部胆管粘膜に黒色のビリルビン色素の沈着と胆管壁の硬化を認めた.病理組織では胆管全層の変性壊死を伴った胆管炎の所見を呈し悪性の所見は無かった.また原発性硬化性胆管炎やIgG4関連硬化性胆管炎の所見も認めなかった.原因不明の炎症に起因したと思われる稀な胆管狭窄例として本症の病態について病理学的検討を加え報告する.