2014 年 75 巻 3 号 p. 845-850
症例は75歳,男性.幼児期より認める右側鼠径ヘルニアを治療せず経過観察されていた.受診時,立位にて右陰嚢は小児頭大に腫大し,下端は大腿内側中点よりも下方に達していた.CTにて大網と回盲部の脱出を認め,ヘルニア門は直径56mmと開大していた.術中,前方アプローチによりヘルニア内容の還納・ヘルニア門の閉鎖・Lichtenstein法による後壁補強を行い,加えて,単孔式totally extraperitoneal repair (TEP)にて腹膜前腔外側の剥離を行った後,メッシュによるmyopectineal orfice (MPO)の補強を施行した.前方アプローチと併用した単孔式腹腔鏡手術は,皮膚切開が最小限であり,施行が困難なヘルニア嚢の剥離を前方アプローチが肩代わりするため手技が容易であった.われわれが採用した併用手術は,巨大鼠径ヘルニア治療の選択肢の一つと考えられた.