2014 年 75 巻 4 号 p. 987-991
高齢化社会に伴い90歳以上の超高齢者に対する手術件数も増加している.超高齢者の汎発性腹膜炎に対し緊急手術で救命しえた1例を報告する.
症例は99歳女性,術前performance statusは1であった.2011年8月,突然の腹痛を主訴に救急搬送された.腹部全体に圧痛を認めたが,血液生化学所見では炎症反応は陰性であった.腹部CTでS状結腸より腹腔内へ脱出した便塊・free airを認め,S状結腸穿孔の診断に対しHartmann手術を施行した.腹腔内には便汁とS状結腸穿孔部を認めた.術後はエンドトキシン吸着療法を施行し,人工呼吸管理を行い,術後5日目で抜管となった.術後,せん妄の他に合併症はなく,第47病日に退院となった.高齢者の腹膜炎は所見に乏しく時に診断に難渋するが,今回の症例では発症早期の診断・治療が救命に結び付いたと考えた.