日本臨床外科学会雑誌
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症例
手術により慢性呼吸不全の改善を認めたupside down stomachの1例
松井 俊大青柳 治彦長谷川 久美兼子 順前島 静顕
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2014 年 75 巻 5 号 p. 1230-1237

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抄録

食道裂孔ヘルニアは頻度が高い疾患であるが,胃軸捻転を伴い縦隔内にほぼ全胃が脱出した,いわゆる“upside down stomach”(以下UDSと略記)はまれである.今回,開腹手術により慢性呼吸不全の改善を認めたUDSの1例を経験したので報告する.
症例は65歳,男性.既往歴に慢性呼吸不全があり,在宅酸素を導入していた.吐血で当科緊急入院となった.胸腹部造影CTで縦隔内に軸捻転を伴う広範な胃の脱出を認めた.上部消化管内視鏡検査では巨大食道裂孔ヘルニアを認め,UDSと診断した.内視鏡的整復を試みたが整復できず,開腹手術を選択した.手術は胃の還納・食道裂孔の補強・噴門形成術を施行した.術後は呼吸機能が改善し,在宅酸素は不要となった.
近年,UDSに対する報告が散見されるが,現在までの本邦報告例は32例とまれな疾患である.若干の文献的考察を加えて報告した.

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