日本臨床外科学会雑誌
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症例
鼠径ヘルニアを介した炎症波及により陰嚢膿瘍を合併した虫垂炎の1例
藤井 圭大薗 慶吾小原井 朋成成富 元廣田 伊千夫江口 徹
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2014 年 75 巻 5 号 p. 1330-1334

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抄録

虫垂炎を契機とし,鼠径ヘルニアを介して陰嚢膿瘍を併発した極めて稀な症例を経験したので報告する.症例は31歳の男性で右陰嚢膨隆・陰嚢痛を主訴とし,当院泌尿器科を受診した.右陰嚢は小児頭大に腫大し,発赤・圧痛・局所熱感を伴っていた.腹部CTでは回盲部付近に15mmの石灰化物と膿瘍形成を指摘,さらに右鼠径ヘルニアと陰嚢膿瘍を認め,穿孔性虫垂炎による腹腔内炎症が右鼠径ヘルニアを介して陰嚢に波及した状態と診断し緊急手術を行った.回盲部には膿瘍が形成され,回腸末端と右側横行結腸が強固に癒着していた.手術は同部の腸管を一括切除,吻合し,十分に洗浄した.右鼠径ヘルニアに対しては鼠径管を開放し大網を腹腔内に還納後,ヘルニア嚢を高位結紮しiliopubic tract repairを行った.陰嚢膿瘍に対しては膿瘍壁を切開・開放しドレーンを留置した.術後経過は良好であり第25病日に軽快退院となった.

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© 2014 日本臨床外科学会
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