2014 年 75 巻 6 号 p. 1491-1496
症例は79歳,女性.胸腔内精査の目的で施行した胸部CTにて左乳房腫瘤を指摘され,当科紹介となった.初診時,マンモグラフィと超音波検査にて左傍乳輪部に3.4×2.0×3.3cm大の分葉形腫瘤を認めたが,針生検組織では良悪性の鑑別が困難であった.乳房MRIでの造影所見は悪性パターンを呈し,粘液癌が疑われた.確定診断のために左乳房部分切除を施行した.術後病理組織所見では,乳管上皮周囲で紡錘形筋上皮細胞が増殖し,多彩な組織像を呈していた.一部に粘液産生や軟骨形成を伴い,乳腺多形腺腫と診断した.多形腺腫は唾液腺に好発する良性混合腫瘍であり,乳腺原発は極めてまれである.今回われわれは,粘液癌との鑑別が困難であった乳腺多形腺腫の1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.