2014 年 75 巻 6 号 p. 1501-1505
患者は70歳女性で,平成24年9月にMMGにて左乳房に円形の腫瘤陰影を指摘され当科を紹介された.触診では腫瘤は蝕知せず超音波検査で左乳頭直上のAB領域に径0.7cmの円形の低エコー腫瘤を,MRIとCTでは同部に0.8×0.7cmの造影される円形の結節を認めた.針生検にて腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma;ACC)と診断した.左乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検を施行した.病理組織学的所見では充実型(Roの分類Grade III)のACC,pT1,ly0,v0,NG1,pN0(0/4),Stage I,ERは陽性,PgR・HER2は陰性であった.本邦ACCの報告71例のうちER陽性症例は自験例を含めて3例であり,本症例はJ-scoreのScore3aと最も高値であった.病理組織学的所見を参考にして悪性度を正確に診断し,術後の治療方針を決定することが重要であると考える.