2014 年 75 巻 6 号 p. 1511-1515
症例は36歳,女性.HIV感染症に対してantiretroviral therapy(ART)療法を施行されていた.2012年7月に乳癌検診で異常を指摘され当院紹介となった.針生検でinvasive carcinomaの診断であり,右乳癌T2N0Mxに対して手術を予定した.術後補助療法を考慮し,事前に抗HIV薬の変更を行ったのち乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した.センチネルリンパ節は陰性であり,最終病理診断はpapillotubular carcinoma with predominant intraductal componentであったため術後補助療法は施行せず経過観察を行っている.HIV感染症に対する治療の進歩に伴い,近年では非AIDS指標癌(non-AIDS-defining cancer,以下NADC)が予後を規定する因子として重要な位置づけとなりつつある.本邦におけるNADC乳癌の報告例は少ないが今後増加することが予想される.今回,日本人女性のNADC乳癌の1症例を経験したので報告する.